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福袋が「中身公開型」に変わった理由

福袋が「中身公開型」に変わった理由

正月の売り場に積まれた福袋は、中身が分からないことが商品の一部でした。何が入っているか確かめられないからこそ、開ける瞬間に価値がありました。

ところが近年は、購入前に中身の一覧を示す形が増えています。写真つきで品番まで公開する例も珍しくありません。楽しみを削る方向に見えますが、そこには理由があります。

福袋の中身公開は、販売の場が通信販売へ移ったことの帰結です。返品権と広告表示の義務がある環境では、中身を伏せたまま売るほうが事業者の負担が大きくなります。

「開けるまで分からない」が成立していた前提

まず、従来の福袋がどういう取引だったかを確認します。店頭で袋を手に取り、レジで支払い、その場で持ち帰る。売買はその場で完結し、あとから内容について争う余地は小さいものでした。

買う側も、中身が期待に届かない可能性を織り込んだうえで選んでいます。金額に対して何が入るかは運であり、その不確実性込みで価格が付いている、という了解が成り立っていました。

この構図は、対面で現物を受け取る取引だからこそ維持できます。販売の場が変われば、前提も変わります。

通信販売には返品権がある

通信販売で売る場合、まず効いてくるのが返品の扱いです。ここが店頭とは大きく違います。

特定商取引法ガイドによれば、通信販売にクーリング・オフ制度はありません。代わりに返品権が定められており、消費者は商品の引渡しを受けた日から数えて8日以内であれば、消費者の送料負担で契約の申込みの撤回や解除ができます。ただし、事業者が広告であらかじめ返品特約を表示していた場合は、その特約によります※1。

福袋にこれを当てはめると、事情が見えてきます。中身を伏せて売る商品は、買った人が内容を確認できるのが開封後です。返品特約を明示していなければ、開けてから8日間、判断を委ねる形になります。

さらに通信販売では、広告に販売価格や代金の支払時期、商品引渡時期、契約の申込みの撤回または解除に関する事項などを表示する義務があります※1。中身が確定していない商品ほど、この表示を過不足なく行うことが難しくなります。

「○万円相当」には根拠が要る

もうひとつの制度的な壁が、金額の見せ方です。福袋の訴求は「1万円で3万円分」という形を取りがちですが、この表示は二重価格表示にあたります。

価格表示ガイドラインでは、比較対照価格として過去の販売価格を用いる場合、セール開始時点からさかのぼる8週間のうち、その価格で販売されていた期間が過半を占めていることが目安とされています※2。加えて、その価格での販売期間が通算2週間未満の場合や、最後に販売した日から2週間以上経過している場合は該当しないとされています※2。

中身が非公開の福袋で「3万円相当」と表示するには、袋の中の各商品について、この条件を満たす価格の裏づけが必要になります。中身を公開していれば、商品ごとの価格を示して説明できます。伏せたままだと、根拠を示す手段が限られます。

実際のトラブルも起きています。ECネットワークが公開している事例では、1万円の福袋について、広告にあった点数より少ない商品が届いたとして多数の購入者から苦情が寄せられた経過が記録されています※3。中身が事前に確定していないことが、そのまま紛争の争点になっています。

表示義務の強化が後押しした

制度の側も動いています。令和4年6月1日に施行された改正特定商取引法では、通信販売の最終確認画面において、取引における基本的な事項を明確に表示することが事業者に義務づけられました※4。誤認させる表示によって申し込んだ消費者は、契約を取り消せる可能性があるとされています※4。

注文確定の直前で内容を示すことが求められる環境では、「中身は届いてからのお楽しみ」という設計は、表示の作りづらい商品になります。一覧を出してしまったほうが、確認画面の要件も満たしやすくなります。

中身公開型が売っているもの

こうして見ると、中身公開型の福袋は、従来のものとは商品の性質が変わっています。

観点従来の福袋中身公開型
買う前に分かること価格と点数の目安個々の商品と総額
価値の源開封時の不確実性単品で買うより安いこと
争いになる点期待との差ほぼ生じない
販売の主戦場店頭通信販売

売っているのは「運」ではなく「まとめ買いの割引」です。福袋という名前は残っていますが、実態はセット商品に近づいています。

その結果として、選ぶ側の判断基準も変わります。開けてみないと分からないから買う、ではなく、単品合計と比べて安いから買う、という比較が可能になりました。

まとめ

福袋が中身公開型に移ったのは、売り方が変わったからです。通信販売にはクーリング・オフがなく、返品特約の表示がなければ引渡しから8日以内は返品を受ける立場になります。広告には価格や返品に関する事項の表示義務があり、「○万円相当」という訴求には比較対照価格としての根拠が求められます。

中身を公開すれば、これらの負担は購入前の説明に置き換わり、届いてからの紛争が減ります。買う側にとっても、単品合計との比較ができるようになりました。楽しみ方は変わりましたが、値札の意味は以前より読み取りやすくなっているといえます。

参考文献・出典

※1 : 「通信販売」 |特定商取引法ガイド(消費者庁)
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/

※2 : 「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方(価格表示ガイドライン)」 |消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf

※3 : 「法律解釈20:福袋の中身(後編)」 |一般社団法人ECネットワーク
https://ecnetwork.jp/about/about_f/about_f3/law_020/

※4 : 「インターネット通販の定期購入トラブルには御注意を!」 |消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2021/notice03/

よくある質問

なぜ最近の福袋は中身が公開されているのですか?

販売の場が通信販売に移り、中身を伏せたまま売ることの制度的な負担が大きくなったためです。通信販売では広告に販売価格や返品に関する事項を表示する義務があり、中身が分からない商品は購入後の判断に委ねられます。事前に公開すれば、その判断が購入前に済みます。

ネットで買った福袋は返品できますか?

通信販売にクーリング・オフ制度はありません。ただし返品特約の表示がない場合は、商品の引渡しを受けた日から8日以内であれば、消費者の送料負担で契約の申込みの撤回や解除ができます。事業者が広告で返品特約を表示していた場合は、その特約によります。

「1万円相当」という表示に根拠は必要ですか?

必要です。販売価格の横に別の価格を並べる表示は二重価格表示にあたり、比較対照価格には根拠が求められます。実際の販売実績やメーカー希望小売価格に裏づけられない金額を用いると、不当表示に該当するおそれがあります。