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「新聞紙で窓掃除」は昭和の知恵か、今も使えるのか

「新聞紙で窓掃除」は昭和の知恵か、今も使えるのか

窓ガラスを新聞紙で拭くときれいになる。この方法は、家事の知恵として長く語られてきました。丸めた新聞紙で水拭きし、別の紙で拭き上げる。手順も簡単です。

ただ、この話が広まった時代と今とでは、新聞紙という物そのものが変わっています。効くか効かないかを議論する前に、前提のほうを確かめてみます。

新聞紙で窓を拭く方法は、拭き上げの手順としては今も成立します。ただし発行部数は25年で半減し、紙は薄くなり、インキは植物油系に置き換わりました。

語られてきた理由

まず、なぜこの方法が知恵として定着したのかを整理します。よく挙げられるのは、インキに含まれる油分が汚れを浮かせ、ガラスに膜を作ってツヤを出す、という説明です。

これに加えて、新聞紙は毎日発生し、読み終われば捨てるものだという事情がありました。専用の掃除用品を買わずに済み、拭いたあとはそのまま処分できます。効果の大小より、この手軽さが定着の理由だった可能性があります。

なお、インキの油分がガラスの汚れ落ちに寄与するという点について、公的機関による検証データは見当たりませんでした。効果を否定する根拠もありませんが、裏づけのある事実として扱うことはできません。

前提1:新聞紙が家にない

最も大きく変わったのは、新聞紙の入手しやすさです。

日本新聞協会の調査によれば、新聞の発行部数は2000年に52,568,032部、1世帯当たり1.04部でした。これが2025年10月時点では24,868,122部、1世帯当たり0.42部となっています※1。

発行部数1世帯当たり部数
2000年52,568,032部1.04部
2010年49,321,840部0.92部
2025年24,868,122部0.42部

25年で部数はほぼ半減し、1世帯当たりでは1部を大きく割り込みました。かつては各家庭に毎日届くものでしたが、現在は届いていない家のほうが多い計算になります。

掃除の知恵として成立するには、材料が手元にあることが前提です。この前提が、まず崩れています。

前提2:紙そのものが薄くなった

次に、新聞用紙の性質です。同じ「新聞紙」という言葉でも、中身は変化しています。

日本新聞協会の国内生産実績では、2025年の新聞用紙は超々軽量紙(40g/平方メートル)が52.9%、超軽量紙(43g/平方メートル)が41.0%を占め、軽量紙以上を合わせると93.9%になります※2。2000年時点で超々軽量紙は2.1%にすぎませんでした※2。

坪量2025年の構成比
40g/平方メートル52.9%
43g/平方メートル41.0%
46g/平方メートル2.8%
49g/平方メートル1.4%
52g/平方メートル2.0%

かつて主流だった49グラム前後の紙は、今では1%台です。薄い紙は水を含んだときに破れやすく、丸めたときの張りも弱くなります。同じ手順でも、扱いやすさは変わっています。

前提3:インキが植物油系に変わった

三つ目がインキです。油分という説明の中身が置き換わっています。

印刷インキ工業会によれば、植物油インキとは、インキ中に含有する植物油または植物油を原料としたエステルとの合計が含有基準量以上のインキを指し、新聞オフ輪インキでは植物油含有30%以上が基準とされています※3。同工業会は、植物油インキについて生分解性があり、VOCの排出もほとんどなく環境負荷低減に寄与すると説明しています※3。

かつての説明が想定していたのは、石油系溶剤を含むインキです。現在の新聞インキはその前提から離れています。油分があること自体は変わりませんが、性質の異なる油に置き換わっている以上、昔の説明をそのまま流用することはできません。

何が残り、何が変わったか

以上を整理します。

要素昭和の前提現在
入手しやすさ毎日各家庭に届く1世帯0.42部
紙の厚み49g前後が中心40gが過半
インキ石油系溶剤が前提植物油30%以上が基準
拭き上げの手順有効有効

変わっていないのは最後の1行です。水拭きしたあと、乾いたもので水分を拭き取るという二段階の手順そのものは、道具が何であれ有効です。窓が乾いたときに跡が残るのは、水分と汚れが残ったまま自然乾燥するためで、拭き上げはそこを防ぎます。

つまり新聞紙は、この手順を実行するための材料のひとつでした。材料が手に入らないなら、糸くずの出にくい布でも同じことができます。逆に、新聞紙でなければならない理由は、裏づけのある形では見つかりませんでした。

なお、拭いた際に手やサッシへインキが移ることがあります。白い枠や壁に触れる場所では、この点も考慮したほうがよいでしょう。

まとめ

新聞紙で窓を拭く方法は、拭き上げという手順の面では今も有効です。ただしその手順を新聞紙で行う必然性は、確認できる範囲では見当たりませんでした。

一方で、前提は大きく変わりました。発行部数は2000年の1世帯1.04部から2025年の0.42部へ半減し、用紙は40グラムの超々軽量紙が過半を占め、インキは植物油含有30%以上を基準とするものに置き換わっています。昭和の知恵かと問われれば、材料の側が昭和のままではない、というのが実態に近い答えになります。手元に新聞があれば使えばよく、なければ布で代用して問題ありません。

参考文献・出典

※1 : 「新聞の発行部数と世帯数の推移」 |一般社団法人日本新聞協会(経営業務部調べ)
https://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.php

※2 : 「新聞用紙の国内生産実績(軽量化の推移)」 |一般社団法人日本新聞協会(経営業務部調べ)
https://www.pressnet.or.jp/data/paper/paper02.php

※3 : 「植物油インキ」 |印刷インキ工業会
https://www.ink-jpima.org/ink_syokubutu.html

よくある質問

新聞紙で窓を拭くとなぜきれいになると言われるのですか?

インキに含まれる油分が汚れを落とし、ガラスにツヤを出すという説明がよく使われます。ただし、この効果を確かめた公的な検証データは見当たりません。確実に言えるのは、パルプ繊維の紙が水分を吸い、拭き上げの道具として機能するという点です。

今の新聞紙でも昔と同じ効果がありますか?

条件は変わっています。新聞オフ輪インキは植物油を30%以上含むことが基準で、生分解性があり、VOCの排出もほとんどないとされています。かつての石油系溶剤を前提とした説明を、そのまま現在のインキに当てはめることはできません。

新聞紙がない場合は何を使えばいいですか?

糸くずの出にくい布であれば代用できます。要点は道具の材質ではなく、水拭きのあとに乾いたもので拭き上げるという二段階の手順です。新聞の発行部数は2025年10月時点で1世帯あたり0.42部まで減っており、家にない前提で考えるほうが現実的です。