電子レンジの価格差は「温め」に出るのか——安い機種との違い
電子レンジの売り場には、1万円台のものから10万円近いものまで並びます。庫内で回っているのは同じマイクロ波のはずですが、価格には大きな幅があります。
温める速さが違うのか、電気代が変わるのか。カタログの数字を並べて確かめてみます。ここではパナソニックの単機能レンジNE-FL1Cと、上位のスチームオーブンレンジNE-BS9Eを比べます。
電子レンジの価格差は、温める力ではなく温め終わりを判断する仕組みに出ます。出力も消費電力もほぼ同じで、違うのはセンサーと機能の数です。
出力の数字はほとんど同じ
まず加熱の強さを見ます。カタログでいちばん目につく数字です。
| 項目 | NE-FL1C(単機能) | NE-BS9E(上位機) |
|---|---|---|
| 高周波出力 | 1000W | 1000W |
| 切り換わり後 | 600W | 600W |
| レンジ消費電力 | 1400W | 1400W |
| 庫内容量 | 22L | 30L |
| インバーター | 搭載 | 搭載 |
単機能レンジのNE-FL1Cは高周波出力1000W、その後600Wに切り換わり、消費電力は1400Wと表示されています※1。上位機のNE-BS9Eも高周波出力1000W、その後600W、レンジ消費電力1400Wです※2。
インバーターはどちらも搭載しています※1※2。出力を細かく制御する仕組みは、上位機だけのものではありません。加熱に関する主要な数値は、ほぼ横並びです。
違うのは高出力を維持する時間
同じ1000Wでも、条件に差があります。ここは見落とされやすい点です。
NE-FL1Cの1000Wは、最大1分30秒の短時間高出力機能として案内されています※1。一方NE-BS9Eは最大5分とされています※2。どちらもその後は600Wに切り換わります。
つまり冷凍ご飯1杯のような短時間の加熱では、両者に差はほとんど生じません。差が出るのは、大皿や複数人分など、加熱時間が長くなる場面です。1分30秒で600Wに落ちるか、5分まで1000Wが続くかで、仕上がりまでの時間が変わります。
日常的に温めるものが1人分中心なら、この違いが効く場面は限られます。
電気代の差はほぼない
ランニングコストも確認します。省エネ法の測定法による年間消費電力量が、それぞれ公表されています。
NE-FL1Cは59.9kWh/年、省エネ基準達成率100%です※1。NE-BS9Eは合計72.0kWh/年で、内訳はレンジ部が59.0kWh/年、オーブン部が13.0kWh/年、省エネ基準達成率は102%です※2。
レンジ部だけを比べると59.9と59.0で、差は1kWh未満です。全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価31円/kWh(税込)で計算すると※3、年間で30円に満たない差になります。
1回の加熱でも同様です。消費電力1400Wの機種を3分使うと0.07kWh、31円/kWhで約2.2円です。これは両機種で変わりません。温めるだけなら、価格差が電気代で回収されることはありません。
差が出るのは「いつ止めるか」
では何が違うのか。センサーです。
NE-FL1Cのセンサーは蒸気センサーで、自動メニュー数は3です※1。NE-BS9Eは高精細・64眼スピードセンサーを搭載し、自動メニュー数は148です※2。同社の比較表でも、機種によってスイングサーチ赤外線センサー、蒸気センサーなど搭載するセンサーが分かれています※4。
センサーが担っているのは、加熱を止めるタイミングの判定です。蒸気センサーは庫内の水蒸気の変化から加熱状態を推定します。赤外線を使うセンサーは、食品の表面温度を面として捉えます。後者のほうが、食品の位置や量による違いを拾いやすくなります。
この差が表れるのは、条件が単純でない場面です。冷蔵と常温のものを一緒に温める、量が日によって変わる、皿の中で厚みが偏っている。こうしたときに、止めどきの判定精度がそのまま仕上がりの差になります。
逆に、毎回同じものを同じ時間で温めるなら、手動で秒数を指定すれば済みます。センサーの精度は、その手間を省く機能だと考えると分かりやすくなります。
どこにお金を払うか
整理すると、判断は次のように分かれます。
- 温める対象が1人分中心——出力も電気代も変わらないため、単機能レンジで足りる場面が多くなります
- 自動で任せたい——センサーと自動メニューの差が、そのまま使い勝手の差になります
- オーブンやグリルを使う——ここは単機能レンジにない機能で、価格差の大きな部分です
- 庫内容量が必要——22Lと30Lでは入る皿の大きさが変わります
- 加熱時間が長くなりがち——1000Wを維持できる時間の差が効いてきます
3番目が実は最も大きな要素です。上位機の価格には、レンジ以外の調理機能が含まれています。オーブンを使わないのであれば、その分の費用は温めの品質には返ってきません。
まとめ
単機能レンジと上位機の仕様を並べると、高周波出力は1000Wで同じ、レンジ消費電力も1400Wで同じ、レンジ部の年間消費電力量は59.9kWhと59.0kWhでほぼ同じでした。温める力そのものに価格差は表れていません。
違いは、1000Wを維持できる時間が1分30秒か5分か、そしてセンサーが蒸気センサーか高精細・64眼スピードセンサーか、自動メニューが3か148か、という点にあります。価格差が買っているのは加熱の強さではなく、判断を任せられる範囲と、オーブンなどレンジ以外の機能です。温めるだけの用途なら、その差にお金を払う必要は小さいといえます。
参考文献・出典
※1 : 「NE-FL1C 仕様・詳細情報(単機能レンジ)」 |パナソニック
https://panasonic.jp/range/products/NE-FL1C/spec.html
※2 : 「NE-BS9E 仕様・詳細情報(スチームオーブンレンジ)」 |パナソニック
https://panasonic.jp/range/products/NE-BS9E/spec.html
※3 : 「よくある質問 Q&A(電気料金の目安単価)」 |公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会
https://www.eftc.or.jp/qa/
※4 : 「スチームオーブンレンジ・電子レンジ 比較表」 |パナソニック
https://panasonic.jp/range/comparison.html