100円ショップが100円で儲かる仕組み
ハサミ、収納ケース、食器、文房具。素材も大きさも違う商品が、同じ100円で並んでいます。原価がまったく違うはずなのに、なぜ同じ価格で成立するのでしょうか。
答えは「1品ごとに利益を出していない」という点にあります。この設計を知ると、100円ショップの品揃えの見え方が変わります。
100円ショップは商品ごとの原価率を揃えていません。原価率の高い商品と低い商品を意図的に組み合わせ、店全体として採算が合うように設計されています。
原価率は商品ごとにバラバラでよい
通常の小売業では、商品ごとに一定の粗利を確保する考え方があります。仕入れ値に対して何割の利益を乗せるか、という発想です。
100円ショップはこれと違います。売価が100円に固定されている以上、仕入れ値が高い商品は原価率が高くなり、安い商品は低くなります。この差を調整せず、そのまま並べます。
たとえば同じ100円でも、樹脂の小物と金属を使った工具では原価がまったく異なります。前者は原価率が低く、後者は高い。これを店全体で平均して採算が合えばよい、という設計です。
この考え方は、複数商品の粗利を組み合わせて全体の利益を作るという意味で、マージンミックスと呼ばれます。買い物かごの中で高原価の商品と低原価の商品が混ざることを前提としています。
「お得な商品」は意図的に置かれている
この構造から、いくつかのことが導けます。まず、100円ショップには明確に「お得な商品」と「そうでない商品」が混在しています。
原価率の高い商品は、消費者から見れば100円の価値を大きく上回ります。こうした商品は集客の役割を果たし、来店のきっかけになります。一方、原価率の低い商品がその分を補います。
したがって「100円ショップは全部お得」でも「全部が安かろう悪かろう」でもありません。品目によって、100円という価格に対する内容の差が大きく開いているのが実態です。
| 傾向 | 該当しやすい商品 |
|---|---|
| 原価率が高い(お得な傾向) | 金属を使った工具、内容量の多い消耗品、複雑な構造の製品 |
| 原価率が低い | 単純な樹脂成型品、軽量な小物 |
もちろん個別の原価は公表されていないため、これは構造からの推測です。ただ「同じ100円でも中身は等価ではない」という前提で見ると、選び方が変わります。
企画から関わることでコストを下げる
もう一つの柱が、商品の作り方です。既存のメーカー品を仕入れて売るのではなく、企画段階から関与する自社ブランド商品の比率が高いことが知られています。
企画から関わると、仕様と生産数量を自社で決められます。売れる数を見込んで発注量を決めれば、過剰生産と過剰在庫を抑えられます。流通の段階も減るため、中間コストが乗りません。
この違いは、同じような商品がメーカー品として売られている場合との価格差に直結します。品質そのものより、コストの積み上がり方が違うということです。
薄利多売でも利益率は上がる
100円ショップは薄利多売の典型として語られますが、企業の利益率が低いとは限りません。
東洋経済オンラインに掲載された矢部謙介氏の記事「逆風の100均業界、セリア『驚異の利益率11%』の訳」では、薄利多売のビジネスでありながら高い利益率を実現している構造が取り上げられています※1。
1品あたりの利益が小さくても、回転率が高く、品揃えの設計が効いていれば、企業としての利益率は上がります。「安い=儲かっていない」という直感は、必ずしも成り立ちません。
買う側としての見方
仕組みを知ったうえで、買い物にどう活かすか。判断の軸は「その商品を100円で作れるか」です。
- 素材と加工の手間を見る——金属加工や複雑な構造の製品は、100円に対する内容が濃い傾向があります
- 内容量を確認する——消耗品は同種の商品と1個あたりの単価で比べます
- 使う頻度で判断する——使い捨てに近い用途なら100円ショップ、長く使うなら専門品という切り分けが有効です
- 同じ商品が他店にないか見る——同一メーカーの品が別の店で近い価格のこともあります
- 「安いから」で買わない——原価率の低い商品を積み上げると、合計額は小さくありません
5番目が実際には最も効きます。1点100円という価格は判断のハードルを下げるため、必要性の検討が省略されやすくなります。
まとめ
100円ショップが成立するのは、商品ごとに利益を出していないからです。原価率の高い商品と低い商品を組み合わせ、店全体で採算を合わせる設計になっています。
つまり同じ100円でも、内容の濃さには大きな差があります。素材と加工の手間を見て「これを100円で作れるか」と考えると、お得な商品を見分けやすくなります。そして、価格の安さが必要性の判断を省略させる点にだけ注意しておけば、この業態は十分に使えます。
参考文献・出典
※1 : 「逆風の100均業界、セリア「驚異の利益率11%」の訳 「薄利多売ビジネス」でもしっかり儲ける仕組み」 矢部謙介|東洋経済オンライン(2023年6月26日)
https://toyokeizai.net/articles/-/680553
※2 : 「企業情報」 |株式会社大創産業(DAISO)
https://www.daiso-sangyo.co.jp/company