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子どもの視力低下とスマホの関係——研究が示す「意外な要因」

子どもの視力低下とスマホの関係——研究が示す「意外な要因」

子どもの視力低下が話題になるとき、原因として真っ先に挙がるのはスマートフォンやタブレットです。近くを長時間見る生活が目に負担をかけている、という説明は直感に合います。

ただ、近年の大規模な研究が注目しているのは、近くを見る時間そのものより、屋外で過ごす時間のほうです。

21万人超の小学生を追跡した研究では、屋外時間が長いほど近視の発症リスクが下がり、屋外時間と読書時間の間に負の相互作用が認められました。近業を減らすより、外に出る時間を確保するほうに効果が示されています。

視力低下はどこまで進んでいるのか

まず現状を確認します。日本の子どもの裸眼視力は、学年が上がるほど下がる傾向がはっきりしています。

文部科学省が毎年実施している学校保健統計調査によれば、裸眼視力1.0未満の割合は小学生で3割を超え、中学生で約6割、高校生では7割近くに達しています※1※2。この割合は経年でも上昇が続いており、一時的な変動ではありません。

学年による差は、近視が成長期に進行しやすいことを示しています。だからこそ、就学期にどんな生活を送るかが問われることになります。

21万人の追跡が示したこと

原因を特定するには、多人数を長期間追いかける必要があります。中国・天津市で行われた学校ベースのコホート研究は、その規模で実施されました。

Journal of Global Healthに2025年に掲載された研究では、21万9,802人の小学生を対象に、屋外活動時間と読書時間が近視の発症に与える影響が分析されています。3年間の追跡期間における近視の累積罹患率は59.3%でした※3。

この研究の要点は、屋外時間と読書時間の間に負の相互作用が認められたことです。つまり、十分な屋外活動があれば、読書などの近業に伴う近視リスクが和らぐ可能性が示されました。相互作用は男児、低学年、親が近視の子どもで顕著だったと報告されています。

「近くを見るのをやめさせる」よりも「外に出る時間を増やす」ほうが、現実的な打ち手になり得るということです。

目安は1日2時間

研究では、屋外時間の効果が変わる統計的な分割点として2時間が特定されました。時間ごとの傾向は次のとおりです。

1日あたりの屋外時間近視発症のハザード比
1〜2時間0.97
2〜3時間0.90
3時間超0.86

読書時間については、3時間を超える群でハザード比1.05と、わずかにリスクが上がる方向が報告されています※3。近業の影響はゼロではないものの、屋外時間の効果のほうが数値としては大きく出ています。

ここで重要なのは、対象が「まだ近視になっていない子ども」の発症リスクだという点です。すでに近視が進行している目に対しては、屋外時間による進行抑制の効果は限定的とする報告もあります。予防と進行抑制は別の話として扱う必要があります。

生活に落とし込む

2時間という数字は、まとまった外遊びの時間を確保しなければならない、という意味ではありません。合計で満たせば足りると考えると、実行しやすくなります。

  1. 登下校を屋外時間として数える——徒歩通学であれば、往復で30分前後は確保できます
  2. 休み時間に外に出る習慣をつける——学校での短い時間の積み重ねが効きます
  3. 習い事や遊びを屋外に寄せる——同じ時間を使うなら、屋外のものを選びます
  4. 曇りの日も外に出る——屋外の明るさは室内より桁違いに高く、曇天でも差があります
  5. 近業のあいだに休憩を挟む——連続して近くを見続ける時間を区切ります

なお、この研究は中国の小学生を対象としたものです。生活習慣や環境が異なる日本にそのまま当てはまるかは、慎重に見る必要があります。ただ、屋外時間と近視の関係は各国の研究で繰り返し報告されており、方向性としては共通しています。

視力に不安がある場合は、生活習慣の工夫だけで判断せず、眼科での定期的な検査を受けてください。近視の進行を抑える医学的な手段については、専門医の診断が前提になります。

まとめ

子どもの近視をめぐる議論は、長らく「近くを見すぎること」に集中してきました。近年の大規模研究が示しているのは、それに加えて屋外で過ごす時間が重要な役割を果たしているという関係です。

21万人超を追跡した研究では、屋外時間が長いほど発症リスクが下がり、1日2時間が分割点として示されました。近業を厳しく制限するより、外に出る時間を合計で確保する。この方向であれば、日常の中で無理なく取り組めます。

参考文献・出典

※1 : 「学校保健統計調査」 |文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/1268826.htm

※2 : 「小学生の3割、中学生の6割、高校生の7割が視力1.0未満、むし歯は減少傾向 令和5年度学校保健統計調査」 |公益財団法人日本学校保健会 学校保健ポータルサイト
https://www.gakkohoken.jp/kenkonews/archives/4253

※3 : 「Combined and interaction effects of outdoor and reading time on myopia onset: evidence from over 210 000 schoolchildren in China」 |Journal of Global Health(2025年)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12512000/

よくある質問

子どもの視力低下はどのくらい進んでいますか?

文部科学省の学校保健統計調査によれば、裸眼視力1.0未満の割合は小学生で3割を超え、中学生で約6割、高校生で7割近くに達しています。学年が上がるにつれて割合が高くなる傾向があり、経年でも上昇が続いています。

近視の原因はスマホですか?

近くを見る作業が影響することは示されていますが、それだけではありません。21万人超の小学生を追跡した中国の研究では、屋外で過ごす時間が長いほど近視の発症リスクが下がり、屋外時間と読書時間の間に負の相互作用が認められました。十分な屋外活動が、近業に伴うリスクを和らげる可能性が示されています。

屋外活動はどのくらいの時間が目安ですか?

前述の研究では、統計的な分割点として1日2時間が特定されています。屋外時間が1〜2時間の群でハザード比0.97、2〜3時間で0.90、3時間超で0.86と、時間が長いほど発症リスクが下がる関係が示されました。ただし、すでに近視が進行している目に対する効果は限定的とする報告もあります。