なぜそうなる? | | 更新: | TrinityStyle編集部 | 6分で読める

なぜ片付けた部屋はすぐ散らかるのか——リバウンドの心理学

なぜ片付けた部屋はすぐ散らかるのか——リバウンドの心理学

休日をまるごと使って部屋を片付けた。数週間後、気づけば元の状態に戻っている。この経験は珍しくありません。

多くの場合、原因は意志の弱さではなく、片付けたものの中身にあります。何を片付けたのかを見直すと、戻る理由が見えてきます。

散らかりが戻るのは、片付けたのが物の配置であって量ではないからです。収納に余白がない状態では、戻す動作に手間がかかり、いずれ出しっぱなしになります。

「片付け」には2種類ある

片付けという言葉は、性質の違う2つの作業をまとめて指しています。この区別が曖昧なままだと、努力の割に成果が続きません。

1つは配置を変える作業です。散らばっている物を収納に入れ、見えないようにする。これは短時間で見た目が変わるため、達成感があります。

もう1つは量を減らす作業です。使っていない物を手放し、収納に余白を作る。時間がかかり、判断も必要で、終わっても見た目は劇的には変わりません。

多くの人が休日にやっているのは前者です。ところが、リバウンドを防ぐのは後者のほうです。配置だけを変えても、物の総量が収納の容量に対して過剰なままなら、状態は維持できません。

余白がないと「戻す」に手間がかかる

なぜ量が効くのか。理由は、物を戻す動作の手数にあります。

収納がぎゅうぎゅうに詰まっていると、物を戻すのに複数の動作が必要になります。扉を開け、手前の物をどける、隙間を作る、押し込む。この手数が増えるほど、「あとでやろう」と机の上に置く確率が上がります。

余白があれば、扉を開けて入れるだけで済みます。ワンアクションで戻せる状態なら、その場で戻します。

収納の状態戻すのに必要な動作起きること
8割程度開けて入れるその場で戻せる
ほぼ満杯どかす・押し込む後回しになる
溢れている置き場所を探す別の場所に積まれる

つまりリバウンドは、意志の問題ではなく動作の設計の問題です。戻す手間を減らせば、戻す行動は続きます。

もう一つの要因は「判断の回数」

手間と並んで効いているのが、判断の負担です。物の定位置が決まっていないと、片付けるたびに考えることになります。

これはどこに置くか、この書類はいつまで必要か、この箱は捨ててよいか。一つひとつは小さくても、片付けのあいだに何十回も繰り返されます。判断が多いほど疲れ、途中で止まりやすくなります。

逆に定位置が決まっていれば、片付けは判断ではなく移動の作業になります。考えずに手が動く状態になれば、負担は大きく下がります。

だから片付けの目標は「きれいにすること」ではなく、「判断せずに戻せる状態を作ること」に置くほうが続きます。

住まいの面積という前提

物の量を考えるとき、住まいの広さも変数の一つです。同じ物の量でも、面積によって余白の作りやすさは変わります。

国土交通省は住生活基本計画のなかで、世帯人数に応じた居住面積の水準を示しています。健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な水準とされる最低居住面積水準は、単身者で25平方メートル、2人以上の世帯では10平方メートル×世帯人数+10平方メートルです。より豊かな住生活の実現を前提とした一般型誘導居住面積水準は、単身者で55平方メートル、2人以上の世帯では25平方メートル×世帯人数+25平方メートルとされています※1※2。

自分の住まいがどのあたりに位置するかを知っておくと、目標の立て方が変わります。面積に余裕がないなら、収納を増やすより量を減らすほうが確実です。

戻りにくい仕組みの作り方

順番が重要です。量を減らしてから配置を決めます。

  1. 収納の1か所を空にする——引き出し1段からで構いません。全体を一度にやらないのが続けるコツです
  2. 使っていない物を抜く——判断に迷う物は保留にし、明らかに使っていない物だけを外します
  3. 8割に収まる量にする——余白が動作の手数を減らします
  4. 定位置を決める——次に片付けるときに判断が発生しないようにします
  5. 1か所終わったら次に移る——完了した場所が増えるほど、維持しやすくなります

3番目まで到達しない場所は、また元に戻ります。逆にいえば、家全体でなくても、余白のある1か所は維持されます。小さく始めて確実に終える方が、結果的に早く進みます。

まとめ

片付けた部屋がすぐ散らかるのは、片付けたのが配置であって量ではないためです。収納に余白がなければ、戻す動作に手間がかかり、出しっぱなしが増えます。

対策は、収納の8割に収まる量まで減らし、定位置を決めること。この2つで、片付けは判断を伴う作業から移動の作業に変わります。まずは引き出し1段から、余白を作ってみてください。

参考文献・出典

※1 : 「資料8-3 住生活基本計画(全国計画)における誘導居住面積水準及び最低居住面積水準」 |国土交通省 国土交通白書2022 資料編
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r03/hakusho/r04/data/html/ns008030.html

※2 : 「住生活基本計画における「水準」について」 |国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001098415.pdf

よくある質問

片付けてもすぐ散らかるのはなぜですか?

多くの場合、片付けたのは配置であって物の量ではないためです。収納に余白がない状態では、使った物を戻すのに手間がかかり、いずれ出しっぱなしになります。加えて、物の定位置が決まっていないと、片付けのたびに「どこに置くか」を判断する必要が生じ、その負担が継続を妨げます。

リバウンドを防ぐには何から始めればよいですか?

収納に余白を作ることからです。目安として収納の8割程度に収まる量まで減らすと、戻す動作がワンアクションで済むようになります。物を減らさずに配置だけ変えると、見た目は整っても戻す手間は変わらないため、同じ状態に戻ります。

住まいが狭いと片付けは難しいですか?

物の量に対して面積が不足していれば難しくなります。国土交通省は住生活基本計画で世帯人数に応じた居住面積水準を示しており、単身者の最低居住面積水準は25平方メートル、誘導居住面積水準(一般型)は55平方メートルとされています。自分の住まいと世帯人数を照らして、物の量が面積に見合っているかを確認する目安になります。