なぜそうなる? | | 更新: | TrinityStyle編集部 | 6分で読める

調理家電を「借りる」人が増えている——所有しない選択の背景

調理家電を「借りる」人が増えている——所有しない選択の背景

ホットクック、電気圧力鍋、低温調理器、コーヒーメーカー。ここ数年で調理家電の種類は一気に増えました。同時に、それらを月額で借りるサービスも広がっています。

買えば自分の物になるのに、なぜ借りる選択が支持されるのでしょうか。製品の性質と、暮らしの側の変化の両方から見ていきます。

調理家電は使ってみないと生活に合うか分からず、合わなかったときに置き場所を占有し続けます。この「外れたときのコスト」が、借りるという選択を合理的にしています。

調理家電には特有の不確実性がある

家電のなかでも、調理家電は事前に判断しにくい部類に入ります。性能ではなく、生活習慣との相性で使用頻度が決まるためです。

冷蔵庫や洗濯機は、買えば必ず毎日使います。一方、電気圧力鍋や低温調理器は、その調理法が自分の生活リズムに合うかどうかで頻度が変わります。平日に仕込む時間があるか、作り置きをする習慣があるか。これは使ってみるまで分かりません。

しかも、外れたときの影響が大きい種類の製品です。使わなくなった調理家電はキッチンや収納の一角を占め続けます。売却や処分にも手間がかかります。

つまり調理家電の購入は、金額のリスクだけでなく、場所を長期間占有するリスクを含んでいます。この構造が、借りるという選択肢の価値を押し上げます。

置き場所のコストが上がっている

外れたときのコストは、住まいの条件によって変わります。収納に余裕がある家では大きな問題になりませんが、その余裕は全体として減る方向にあります。

国立社会保障・人口問題研究所の日本の世帯数の将来推計(令和6年推計)は、家族類型別の世帯数の推移を示しています※1。単独世帯の増加は継続して見込まれており、世帯の小規模化が進む前提で各種の推計が立てられています。

世帯が小さくなれば、住居も小さくなる傾向があります。同じ「使わない家電1台」でも、収納に余裕のある家と、ワンルームのキッチンとでは負担がまったく違います。

この変化が、所有と利用の損得を静かに動かしています。置き場所が希少になるほど、使わない物を持ち続けるコストは上がります。

損益はどこで分かれるか

では実際に、借りると買うのどちらが得なのでしょうか。判断の軸は使う期間です。

条件有利な選択
毎日使うことが確実購入
使うか分からないサブスクで試す
使う期間が数か月と決まっているサブスク
収納に余裕がないサブスク(返却できる)
長期間使い続ける見込み購入

月額料金の累計が購入価格に達する時点が、金額上の分岐点です。それより長く使うなら購入が有利になります。

ただしこの計算には、金額に表れない要素が2つあります。1つは、合わなかったときに返却できるという選択肢の価値。もう1つは、置き場所を空けられることの価値です。収納が逼迫している家では、この2つが金額差を上回ることがあります。

最近は、一定期間使い続けたユーザーに所有権が移る形のサービスもあります。試してから買うという流れが、1つの契約のなかで完結する設計です。

契約前に確認すること

サブスクは便利ですが、契約条件によっては想定外の負担が出ます。確認する項目を決めておくと安全です。

  1. 最低利用期間の有無を確認する——短期間で返却しても、期間分の料金が発生する場合があります
  2. 途中解約時の扱いを確認する——違約金や残額の一括請求が設定されていることがあります
  3. 返却時の状態に関する規定を読む——通常使用の範囲を超える汚損の扱いを把握しておきます
  4. 送料の負担を確認する——往復の送料が自己負担だと、短期利用のコストが上がります
  5. 購入した場合の総額と比較する——月額×想定利用月数で、分岐点を先に計算しておきます

5番目を先にやっておくと、「気づいたら購入価格を超えていた」という事態を避けられます。

まとめ

調理家電のサブスクが広がっているのは、この分野が「使ってみないと分からない」性質を強く持つためです。外れたときに置き場所を占有し続けるコストが、借りるという選択を合理的にしています。

世帯の小規模化が進むなかで、収納の余裕は減る方向にあります。損得を判断するときは、月額と購入価格の比較に加えて、返却できることと場所が空くことの価値を織り込んでみてください。長く使うと分かっているものは、買うほうが有利です。

参考文献・出典

※1 : 「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和2(2020)年~令和32(2050)年 令和6(2024)年推計」 |国立社会保障・人口問題研究所
https://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2024/t-page.asp

※2 : 「平成30年版 情報通信白書|単独世帯の増加」 |総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd141110.html

よくある質問

調理家電のサブスクは買うより得ですか?

使う期間によって逆転します。月額料金の累計が購入価格を超えるまでの期間が損益の分岐点で、長く使うほど購入が有利になります。一方、使わなくなったときに返却できる点、置き場所を空けられる点は金額に表れない価値です。合うかどうか分からない製品を試す用途では、サブスクが有利になりやすくなります。

なぜ調理家電で「借りる」が広がっているのですか?

調理家電は使ってみないと生活に合うか分からず、合わなかったときに置き場所を占有し続けるという性質があるためです。加えて単独世帯が増え、住居面積あたりの収納余裕が小さくなっています。使わない家電を持ち続けるコストが相対的に上がっていることが背景にあります。

サブスクを使うときの注意点は何ですか?

契約期間の縛りと、途中解約時の扱いを最初に確認することです。最低利用期間が設定されている場合、短期間で返却しても料金が発生します。あわせて、返却時の状態に関する規定と送料の負担も確認しておくと、想定外の請求を避けられます。