浄水器とペットボトル、1Lあたりの本当のコスト
飲み水をどうまかなうかは、家庭ごとに分かれます。蛇口からそのまま、浄水器を通して、あるいはペットボトルを買う。どれも「水を飲む」という同じ目的ですが、支払っている金額は大きく違います。
比べるときに厄介なのは、単位がそろっていないことです。水道は立方メートル、浄水器はカートリッジ1個、ペットボトルは1本。すべて1リットルあたりに直せば、比較ができます。
飲み水のコストは1リットルあたりで比べると差が明確になります。浄水器の単価を決めているのは総ろ過水量ではなく、交換までに実際に使った量です。
水道水は1Lあたり約0.14円
出発点は水道水です。東京都水道局の23区の料金表では、口径20ミリの基本料金が1,170円、従量料金は使用水量の区分ごとに単価が決まっています※1。
| 使用水量の区分 | 1立方メートルあたり(税抜) |
|---|---|
| 1〜5立方メートル | 0円 |
| 6〜10立方メートル | 22円 |
| 11〜20立方メートル | 128円 |
| 21〜30立方メートル | 163円 |
| 31〜50立方メートル | 202円 |
料金表に基づく金額に1.10を乗じて税込額を算出します※1。月11〜20立方メートルの区分にあたる家庭が1リットル余分に使う場合、128円に1.10を掛けた140.8円を1,000で割って、約0.14円という計算になります。
これは追加1リットルあたりの単価です。基本料金と下水道料金は別に発生するため、飲み水として使う分の総額とは異なりますが、飲用分を増やしたときに増える金額としてはこの水準です。
浄水器は総ろ過水量で割る
次に浄水器です。ここには表示のルールがあります。
家庭用品品質表示法にもとづき、浄水器には浄水能力として除去対象物質の種類ごとに総ろ過水量と除去率80パーセントである旨を表示すること、ろ材の取替時期の目安を具体的に分かりやすく表示することが定められています※2。買う前に、どれだけろ過できるかが分かる仕組みです。
三菱ケミカル・クリンスイの蛇口直結型MD301では、浄水カートリッジ1個で900リットルをろ過でき、交換目安は1日10リットル使用で3か月とされています※3。同社のオンラインストアでは、対応カートリッジMDC01Sが1個5,687円、2個入りのMDC01SWが10,406円(いずれも税込)で、定期配送の場合は2,500円という価格が示されています※4。
900リットルを使い切る前提で計算すると、次のようになります。
| カートリッジの入手方法 | 1個あたり | 900L使い切った場合の単価 |
|---|---|---|
| 定期配送 | 2,500円 | 約2.8円/L |
| 2個入りを購入 | 5,203円 | 約5.8円/L |
| 1個を購入 | 5,687円 | 約6.3円/L |
これに水道水の約0.14円を足しても、1リットルあたり3円から6円台に収まります。
単価を決めているのは「使い切ったかどうか」
ここからが本題です。上の計算には、900リットルを使い切るという前提が入っています。
交換目安の3か月は、1日10リットル使う場合の想定です※3。飲用と調理だけに使い、1日2リットルなら、3か月で180リットルにしかなりません。カートリッジは水量だけでなく期間でも劣化するため、900リットルに届かないまま交換時期が来ます。
このとき、定期配送の2,500円を180リットルで割ると、1リットルあたり約13.9円です。使い切った場合の約2.8円に対して、5倍になります。
| 1日の使用量 | 3か月の使用量 | 1Lあたり(2,500円のカートリッジ) |
|---|---|---|
| 10L | 900L | 約2.8円 |
| 5L | 450L | 約5.6円 |
| 2L | 180L | 約13.9円 |
| 1L | 90L | 約27.8円 |
浄水器の1リットル単価は、製品の性能ではなく使い方で決まります。少ししか使わない家庭ほど割高になり、料理にも使う家庭ほど安くなります。カタログの総ろ過水量は上限であって、実際の単価ではありません。
ペットボトルとの差
比較対象としてペットボトルを置きます。ここでは2リットル入りを100円で買うと仮定します。1リットルあたり50円です。
1日2リットルを1年間まかなう場合、年間の使用量は730リットルになります。
| 方法 | 年間のコスト(前提つき) |
|---|---|
| 水道水をそのまま | 約100円 |
| 浄水器(カートリッジを3か月ごとに交換) | 約10,100円 |
| ペットボトル(2L100円と仮定) | 36,500円 |
ここで注意したいのは、浄水器の年間コストが使用量にあまり左右されない点です。交換は3か月ごとなので、年4個で10,000円という支出は、1日2リットルでも10リットルでもほぼ変わりません。変わるのは1リットルあたりの単価だけです。
つまり浄水器を入れたなら、飲用以外にも回したほうが得になります。年間の支出が同じなら、ろ過した量が多いほど1リットルの単価は下がるためです。
それでも、浄水器が最も割高になるケースでペットボトルの3分の1以下に収まります。使い切る使い方ができれば、1リットルあたりの差は17倍前後まで開きます。
ただし浄水器には本体価格がかかり、これは上の表に含めていません。また、水の入手に費やす手間や、備蓄としての価値は金額に表れません。ペットボトルを選ぶ理由が価格でないのなら、この比較だけで結論は出ません。
まとめ
1リットルあたりで並べると、水道水は約0.14円、浄水器は使い方しだいで約2.8円から28円、ペットボトルは2リットル100円として50円という関係になります。
判断で効くのは、浄水器の単価が総ろ過水量ではなく実際の使用量で決まる点です。カートリッジは期間でも交換時期が来るため、飲用だけの少量使用では表示上の900リットルを使い切れず、単価は数倍に上がります。浄水器を安く使いたいなら、調理にも回して交換までに使い切ることが、そのまま節約になります。
参考文献・出典
※1 : 「水道料金・下水道料金の計算方法(23区)」 |東京都水道局
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/tetsuduki/ryokin/keisan_23
※2 : 「浄水器(家庭用品品質表示法)」 |消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_34.html
※3 : 「MD301」 |三菱ケミカル・クリンスイ株式会社
https://cleansui.com/products/md301
※4 : 「蛇口直結型カートリッジ」 |クリンスイ オンラインストア(三菱ケミカル・クリンスイ株式会社)
https://shop.cleansui.com/%E8%9B%87%E5%8F%A3%E7%9B%B4%E7%B5%90%E5%9E%8B/%E8%9B%87%E5%8F%A3%E7%9B%B4%E7%B5%90%E5%9E%8B%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%B8/