「最大90%OFF」のカラクリ——二重価格表示の仕組み
セール告知でよく見るのが、二つの価格を並べた表示です。元の値段に線を引き、その横に安い価格を書く。あるいは「最大90%OFF」と大きく掲げる。
こうした表示には、景品表示法に基づく考え方が定められています。どこまでが許容され、どこからが問題になるのか。線の引かれ方を知っておくと、値札の読み方が変わります。
値引き表示の根拠になる価格は種類が限られており、過去の自店価格を使う場合は8週間という物差しがあります。「最大」の表示は、適用範囲を示さず最大値だけを強調すると不当表示になり得ます。
比較対照価格に使えるのは3種類
まず前提です。販売価格の横に並べる価格を、比較対照価格と呼びます。消費者庁は、この比較対照価格として何を使うかで考え方を整理しています。
過去の販売価格については、同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格とする場合には、不当表示に該当するおそれはないとされています※1。逆に、その条件を満たさない価格を使う場合は、いつの時点でどの程度の期間販売されていた価格かを正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがあるとされています※1。
メーカー希望小売価格については、製造業者等により設定されあらかじめカタログ等により公表されているとはいえない価格を希望小売価格と称して用いる場合に、不当表示に該当するおそれがあるとされています※1。
他店価格についても、消費者が代替的に購入し得る事業者の最近時の販売価格とはいえない価格を用いる場合、また市価を使いながら競争関係にある相当数の事業者の実際の販売価格を正確に調査していない場合には、同様の問題があるとされています※1。
「8週間のうち過半」という物差し
では「最近相当期間」とはどれくらいなのか。ここに具体的な目安があります。
価格表示ガイドラインでは、二重価格表示を行う最近時について、セール開始時点からさかのぼる8週間を検討の対象とし、その期間中に当該価格で販売されていた期間が過半を占めているときには「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とみてよい、とされています※2。
ただし例外も置かれています。その価格での販売期間が通算して2週間未満の場合、または最後にその価格で販売した日から2週間以上経過している場合には、該当しないと考えられるとされています※2。
ガイドラインには具体例も載っています。衣料品店が「当店通常価格12,000円を9,500円」と表示していたが、実際には過去8週間のうち12,000円で売っていたのは当初の2週間だけで、残りの6週間はもっと安く売っていた、という例です※2。人形店が「72,000円の品をセール価格43,000円」と表示しながら、72,000円で売っていたのは2日間だけだった例も挙げられています※2。
| 比較対照価格の種類 | 満たすべき条件 |
|---|---|
| 過去の自店価格 | 直近8週間の過半で販売、通算2週間以上、最後の販売から2週間以内 |
| メーカー希望小売価格 | 製造業者等が設定し、カタログ等で公表されていること |
| 他店価格 | 代替購入できる事業者の最近時の実際の販売価格であること |
| 市価 | 競争関係にある相当数の事業者の実際の販売価格を正確に調査すること |
「最大」という言葉が成立する条件
割引率の表示についても、別に考え方が定められています。ここが「最大90%OFF」の核心です。
ガイドラインは、割引率や割引額の表示について、基本的には二重価格表示と同じ考え方が適用されるとしたうえで、一括して割引率を表示する場合には、算出の基礎となる価格、適用される商品の範囲、適用されるための条件を明示する必要があるとしています※2。
そのうえで、不当表示に該当するおそれのある例として、次の類型が挙げられています。最大割引率が適用されるのは一部のものに限定されているにもかかわらず、個々の商品ごとに割引率を表示せず、一定の幅の割引率で最大値を強調した表示を行い、あたかも多くの商品に最大割引率が適用されるかのように見せること※2。
具体例として、電器店が個々の商品の割引率を示さずに「☆マークがついている商品は、5〜20%値引きします」と表示し、かつ「5%」を著しく小さく記載していた場合が挙げられています※2。
つまり問題は「最大」と書くこと自体ではなく、下限を見えにくくすることのほうです。90%引きの商品が1点でもあれば嘘ではありませんが、それが売場のごく一部であることを伝えないなら、表示として問題が生じ得ます。
値上げしてから割り引く形も対象
もうひとつ、押さえておきたい類型があります。割引の計算元を動かす方法です。
ガイドラインは、表示価格をいったん引き上げた上で割引率等を用いた表示を行うこと、セール実施の決定後に販売が開始された商品を対象として割引率等を用いた表示を行うことを、不当表示に該当するおそれのある例として挙げています※2。衣料品店が「表示価格から3割引」と表示しながら、対象商品の表示価格をセール直前に引き上げていた例が示されています※2。
消費者庁のページでも、家電量販店が競合店の平均価格からの値引きと表示しながら実際より高い価格を設定していた例、メガネ店が「メーカー希望価格の半額」と表示したが希望価格は実際には設定されていなかった例が挙げられています※1。
買う側の読み方
ルールを踏まえると、確認すべき点は絞られます。
- 「最大」の下限を探す——幅の表示なら、小さく書かれた側が実際の相場です
- 対象商品の範囲を見る——全品なのか、特定の棚だけなのかで意味が変わります
- 元値がいつの価格か書いてあるかを見る——期間の記載がある表示は根拠を示している側です
- 希望小売価格の有無を確かめる——オープン価格の商品では、そもそも比較対照に使えません
- セール直前の価格を覚えておく——同じ商品を継続的に見ている場合にだけ分かる情報です
3番目は判断材料として有効です。ガイドラインは、期間を明示せずに過去の価格を使うことを問題としているため、期間を書いている表示は、少なくともその点を意識していることになります。
まとめ
値引き表示には、根拠として使える価格の種類と条件が定められています。過去の自店価格を使うなら、直近8週間の過半でその価格で販売し、通算2週間以上、最後の販売から2週間以内という目安があります。
「最大90%OFF」という表示が問題になるのは、最大値の適用が一部に限られるのに個々の割引率を示さず、下限を見えにくくして最大値を強調する場合です。値上げしてから割り引く形も、同様に不当表示のおそれがある類型として挙げられています。売場で見るべきは割引率の大きさではなく、その率が何に適用されるのかという範囲のほうだといえます。
参考文献・出典
※1 : 「二重価格表示」 |消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/double_price
※2 : 「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方(価格表示ガイドライン)」 |消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf