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サブスクの損益分岐点——「解約忘れ」が全てを変える

サブスクの損益分岐点——「解約忘れ」が全てを変える

サブスクリプションが得かどうかは、単純な計算で判断できます。月額を、同じ内容を都度買った場合の値段で割るだけです。

ところが実際の家計では、この計算どおりにならないことがあります。原因は料金の高さではなく、契約が続いてしまうことのほうにあります。

サブスクの損益分岐点は月の利用回数で決まります。ただし使わない月の料金は全額が損失となるため、解約のしやすさが実質的な単価を左右します。

分岐点は回数で表れる

まず計算です。月額料金を都度払いの単価で割ると、何回使えば元が取れるかが出ます。

月額都度払いの単価元が取れる回数
500円400円月2回
1,000円400円月3回
1,000円200円月5回
2,000円500円月4回

表を見ると、金額の絶対値より回数のほうが判断しやすいことが分かります。月3回という条件は、週1回に届かない頻度です。動画や音楽のように日常的に使うものなら、たいてい超えます。

問題は、この計算が「使った月」だけを前提にしている点です。使わなかった月は、分母となる回数がゼロになります。1回あたりの単価は計算できず、その月の支払いは丸ごと損失になります。

実際の支払額は月1,000円以下が4割

支出の規模も確認します。消費者庁が2019年11月にサブスクリプション・サービスの利用経験者520人を対象に実施した調査では、ひと月あたりの支払総額は1,000円以下が43.3%と最も多く、2,000円以下が22.5%、3,000円以下が10.6%でした※1。

複数のサービスを合わせた総額での回答なので、1件あたりはさらに小さくなります。金額が小さいことは、家計に対する影響が限定的である一方、見直しの動機が生まれにくいことも意味します。

同じ調査では、利用するにあたって困った点として「使い切れなかった/あまり利用できなかった」が26.9%で最多でした※1。4人に1人以上が、契約したのに使っていないという状態を経験しています。

解約でつまずく人は半数近い

では、使わなくなったサービスはすぐ解約されるのか。ここに落とし穴があります。

同調査で解約経験があると答えた人は51.3%でした。そのうち解約時に困った点として、解約方法が分からなかったが39.3%、解約の期限となる日が分かりにくかったが21.0%、解約期限に間に合わず翌月の料金も請求されたが13.5%という結果でした※1。

最後の項目が示しているのは、意図せず1か月分を余計に払った人が、解約経験者の1割以上いるという事実です。金額としては数百円から千円台かもしれませんが、これは使っていない期間への支払いなので、支出のうち100%が損失にあたります。

なお、こうした状況を受けて制度も動いています。令和4年6月1日施行の改正特定商取引法では、通信販売の最終確認画面で取引の基本的な事項を明確に表示することが事業者に義務づけられ、誤認させる表示によって申し込んだ消費者は契約を取り消せる可能性があるとされています※2。国民生活センターも、詐欺的な定期購入商法への規制強化として同じ改正を案内しています※3。

使わない月が実質単価を押し上げる

損益分岐点の話に戻ります。使わない月を計算に入れると、見え方が変わります。

月1,000円のサービスを1年契約し、実際に使ったのが8か月だったとします。年間の支払いは12,000円ですが、価値を受け取ったのは8か月分です。使った月に均すと、実質的な月額は1,500円になります。

この計算でいくと、当初「月3回使えば元が取れる」だったサービスは、月4回半に引き上がります。分岐点を動かしているのは料金改定ではなく、自分が使わなかった期間です。

年間で使った月数実質の月額(月1,000円の場合)
12か月1,000円
10か月1,200円
8か月1,500円
6か月2,000円

半分の月を使わなければ、単価は2倍です。ここまで来ると、都度払いのほうが安いという逆転が起こります。

解約忘れを構造で防ぐ

意志の力に頼らない対策のほうが確実です。順番に置いていきます。

  1. 契約日ではなく解約期限をカレンダーに入れる——無料期間つきなら、終了の数日前に通知が出るようにします
  2. 支払い方法を1つに寄せる——明細を見れば契約中のサービスが一覧できます
  3. 契約時に解約手順を確認しておく——調査で最も多かった困りごとは、解約方法が分からないことでした
  4. 使っていない月を記録する——2か月連続で使わなければ見直しの合図です
  5. 年払いは慎重に選ぶ——割引と引き換えに、見直しの機会が年1回に減ります

3番目は入り口の段階でできる予防です。解約が会員ページで完結するのか、別の窓口が必要なのかを、申し込む前に見ておけば、あとで探す手間がなくなります。

まとめ

サブスクの損益分岐点は、月額を都度払いの単価で割った回数として表れます。月1,000円で1回400円相当なら、月3回が目安です。この水準自体は、日常的に使うサービスなら難しくありません。

計算を崩すのは、使わない月の存在です。年12か月のうち8か月しか使わなければ、実質的な月額は1,500円になり、分岐点は月4回半へ上がります。消費者庁の調査では利用者の26.9%が使い切れなかったと答え、解約経験者の13.5%が期限に間に合わず翌月分も請求されています。損得を分けているのは料金ではなく、やめたいときにやめられるかどうかだといえます。

参考文献・出典

※1 : 「サブスクリプション・サービスの利用状況に関するアンケート結果(2019年12月9日)」 |消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/pdf/caution_internet_200205_0002.pdf

※2 : 「インターネット通販の定期購入トラブルには御注意を!」 |消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2021/notice03/

※3 : 「「おトクにお試しだけ」のつもりが「定期購入」に!?-「詐欺的な定期購入商法」の規制が強化された改正特定商取引法が施行されました!-」 |独立行政法人国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220609_1.html

よくある質問

サブスクの損益分岐点はどう計算しますか?

月額料金を、同じ内容を都度払いで買った場合の単価で割ります。月1,000円のサービスで、都度払いなら1回400円かかる内容なら、月3回使えば元が取れる計算です。分岐点は回数で表れるため、料金の高さより利用頻度のほうが結果を左右します。

サブスクの解約でつまずく人はどれくらいいますか?

消費者庁が2019年に利用経験者520人に行った調査では、解約経験がある人は51.3%でした。そのうち39.3%が解約方法が分からなかったと答え、21.0%が解約の期限が分かりにくかった、13.5%が解約期限に間に合わず翌月の料金も請求されたと回答しています。

解約忘れを防ぐにはどうすればいいですか?

契約した日ではなく、解約の期限日をカレンダーに登録することが有効です。無料期間つきのサービスでは、期限の数日前に通知が届くよう設定しておくと、判断する時間が確保できます。加えて、支払い方法を一本化しておくと、明細で契約中のサービスを一覧できます。