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「高い家電ほど長持ち」は本当か——価格と耐久性のデータ

「高い家電ほど長持ち」は本当か——価格と耐久性のデータ

家電売り場で高いモデルを前にしたとき、「高いほうが長く使えるから結局は得」という説明を受けたことはないでしょうか。価格差を正当化する理由として、耐久性はよく持ち出されます。

この直感がどこまで正しいのか、公表されているデータで確かめてみます。使用年数の実態と、修理できる期間の仕組みの2つから見ていきます。

価格が寿命を決めるという公的データはありません。決定的なのは修理できる期間で、これはメーカーの部品保有年数によって決まり、その年数は価格帯ではなく品目ごとに定められています。

家電は実際に何年使われているのか

まず実態から確認します。買い替えをした世帯の平均使用年数は、品目によって10年前後から14年程度まで幅があります。

内閣府の消費動向調査によれば、買い替えをした世帯が買い替え前に使用していたものの平均使用年数は、ルームエアコンが14.2年で最も長く、電気冷蔵庫が13.5年で続きます。買い替えの理由はいずれも故障が最も多くなっています※1。

ここで注意したいのは、この数値が「買い替えをした世帯だけ」の平均だという点です※2。まだ使い続けている家庭は集計に入りません。つまり実際の使用年数は、この数字よりさらに長い可能性があります。

いずれにせよ、多くの家庭が壊れるまで使い切っていることは確かです。だとすれば問うべきは「何年もつか」ではなく、「壊れたときに直せるか」になります。

修理できる期間は価格ではなく品目で決まる

ここが検証の核心です。家電を修理できるかどうかは、メーカーが交換部品を持っているかで決まります。そしてこの保有年数は、製品の価格帯ではなく品目ごとに決められています。

補修用性能部品の保有期間とは、販売した製品が故障したときに修理できるよう、メーカーが部品を保有している期間のことです。起算点は購入日ではなく、その製品の製造を打ち切った時点です※3。

全国家庭電気製品公正取引協議会の製造業表示規約では、品目別に次のように定められています※4。

品目補修用性能部品の保有期間(製造打ち切り後)
エアーコンディショナー9年
電気冷蔵庫9年
カラーテレビ8年
電子レンジ8年
扇風機8年
電気洗濯機6年
電気掃除機6年
電気ストーブ6年
換気扇6年

この表に価格は登場しません。10万円の掃除機も2万円の掃除機も、同じ6年です。つまり「高いモデルを買えば長く修理できる」という関係は、制度上は存在しないことになります。

さらに起算点が製造打ち切り時点であることも見落とされがちです。型落ち品を安く買った場合、購入時点ですでに保有期間の一部が経過しています。

エアコンで起きている「ずれ」

平均使用年数と部品保有期間を並べると、品目によっては数字が噛み合っていないことが分かります。

ルームエアコンの平均使用年数は14.2年です。一方、補修用性能部品の保有期間は製造打ち切りから9年。製造打ち切りの時期を考慮しても、後半の数年は「壊れたら部品がない可能性がある期間」に入っている計算になります。

これは製品の善し悪しの話ではなく、制度と実態のずれです。だからこそ、購入時に見ておく価値があるのは価格ではなく次の3点になります。

  1. その品目の部品保有期間を知っておく——エアコン・冷蔵庫は9年、洗濯機・掃除機は6年が目安です
  2. 発売時期を確認する——同じ新品でも、旧モデルは保有期間の起算点が近づいています
  3. 延長保証の年数と対象を確認する——保証期間が部品保有期間を超えていても、部品がなければ修理はできません

では価格は何を買っているのか

価格差が耐久性を保証しないなら、上位モデルの価格は何に対応しているのでしょうか。多くは機能、静音性、省エネ性能、デザインといった使用中の快適さに向けられています。

これらは寿命とは別の価値です。毎日使うものであれば、快適さに対する支出は十分に合理的といえます。ただし「長持ちするから」という理由で価格差を正当化するのは、根拠としては弱いということになります。

判断を分けるのは、買い替えの理由がどちらに寄っているかです。故障で買い替えるなら部品保有期間と修理体制を、不満で買い替えるなら機能と省エネ性能を見る。同じ「高いモデル」でも、選ぶ理由が変われば見るべき数字も変わります。

まとめ

「高い家電ほど長持ち」という直感には、それを裏づける公的なデータが見当たりません。修理できる期間は品目ごとに定められており、価格帯とは連動していないためです。

一方で、平均使用年数が14年に達する品目もあり、多くの家庭が壊れるまで使い切っています。長く使いたいなら、価格ではなく、その品目の部品保有期間と発売時期を確認するほうが確実です。上位モデルの価格差は、寿命ではなく日々の快適さに向けられていると理解しておくと、選択の基準がはっきりします。

参考文献・出典

※1 : 「消費動向調査 令和7年3月実施調査結果」 |内閣府経済社会総合研究所
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/honbun202503.pdf

※2 : 「統計表の見方と用語の解説:消費動向調査」 |内閣府経済社会総合研究所
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/shouhi_yougokaisetsu.html

※3 : 「すぐわかる!家電エコ用語ナビ - 補修用性能部品の保有期間」 |一般社団法人日本電機工業会(JEMA)
https://www.jema-net.or.jp/living/eco/g02_02.html

※4 : 「別表3|製造業表示規約」 |公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会
https://www.eftc.or.jp/code/notation/notation_table3.html

よくある質問

高い家電は本当に長持ちしますか?

価格が寿命を決めるという公的なデータはありません。決定的なのは修理できる期間で、これはメーカーが補修用性能部品を保有する年数によって決まります。この年数は製品の価格帯ではなく品目ごとに定められており、エアコンと冷蔵庫は製造打ち切りから9年、洗濯機と掃除機は6年が目安です。

家電は平均で何年使われていますか?

内閣府の消費動向調査によれば、買い替えをした世帯の平均使用年数はルームエアコンが14.2年で最も長く、電気冷蔵庫が13.5年で続きます。買い替え理由はいずれも故障が最も多くなっています(令和7年3月実施調査)。使い切ってから買い替える人が多い実態がうかがえます。

補修用性能部品の保有期間とは何ですか?

製品が故障したときに修理できるよう、メーカーが部品を保有している期間のことです。起算点は製品の製造を打ち切った時点で、購入日ではありません。全国家庭電気製品公正取引協議会の規約では、エアコン・冷蔵庫が9年、電子レンジ・テレビが8年、洗濯機・掃除機が6年と定められています。