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断捨離の後悔には「型」がある——捨てて失敗の中身をデータで見る

断捨離の後悔には「型」がある——捨てて失敗の中身をデータで見る

片付けの本やテレビ番組では、思い切って手放した後の快適さが語られます。実際、物が減れば掃除は楽になり、探し物の時間も減ります。

一方で、捨ててから後悔したという声も一定数あります。この後悔には共通した型があり、それが分かると避けやすくなります。

後悔しやすいのは、再び手に入れるのが難しい物です。逆にいつでも買い直せる物は、手放しても後悔につながりにくくなります。判断の基準は「使うかどうか」ではなく「再入手できるかどうか」です。

家庭から出るごみは減り続けている

まず全体の傾向を確認します。片付けや不用品の処分は個人の話に見えますが、統計にも表れています。

環境省の調査によれば、令和6年度のごみ総排出量は3,811万トンで前年度比2.2%減、1人1日あたりの排出量は839グラムで同1.5%減となりました。家庭系ごみの排出量は2,117万トンで、前年度比2.7%減です※1。

家庭から出るごみは減少傾向にあります。物を減らす動きが広がっている一方で、リサイクル率は19.3%と横ばい圏にとどまっています。つまり、手放した物の多くは再利用ではなく廃棄に回っていることになります。

この点は後悔と無関係ではありません。廃棄してしまえば取り戻せませんが、譲渡や売却であれば、少なくとも同じ物が世の中に残ります。

「捨てられない」は意志ではなく認知の問題

物を手放しにくいのは、性格や意志の強さの問題として語られがちです。ただ、行動経済学の観点では、これは誰にでも働く認知の傾向として説明されます。

保有効果と呼ばれる現象があります。人は自分が所有している物に対して、他人が同じ物を持っている場合よりも高い価値を感じる、というものです。この効果は、カーネマン、クネッチ、セイラーによる1990年の実験研究で示され、その後も検証が重ねられてきました※2。

実験の典型的な形は、参加者をランダムに2グループに分け、一方にマグカップを与えたうえで、売ってもよい価格と買ってもよい価格をそれぞれ尋ねるというものです。同じ物であるにもかかわらず、手放す側が求める金額のほうが高くなります。

つまり「捨てられない」のは、その物が客観的に価値あるからではなく、自分が持っているという事実によって評価が引き上げられているためです。この理解は、片付けを自己嫌悪の材料にしないためにも役立ちます。

後悔する物には共通点がある

保有効果があるなら、思い切って捨てるほうが良いのでしょうか。ここで効いてくるのが、再入手のしやすさという別の軸です。

物を「使用頻度」と「再入手のしやすさ」の2軸で分けると、後悔しやすい領域がはっきりします。

再入手しやすい再入手が難しい
よく使う手放さない手放さない
ほとんど使わない手放してよい保留にする

問題になるのは右下です。使っていないので捨てる候補に上がるのに、いざ必要になったとき取り戻せません。絶版の書籍や資料、書類、思い出の品、特定の場面でしか使わない道具がここに入ります。

逆に左下、つまり使っていなくて買い直しもきく日用品は、迷わず手放してよい領域です。多くの人が時間をかけて悩むのはこちらですが、実は判断コストをかける必要がありません。

手放し方の手順

後悔を減らすには、捨てるかどうかを一度で決めないことです。判断の間にワンクッション置きます。

  1. 使用頻度ではなく再入手のしやすさで仕分ける——買い直せる物とそうでない物に分けます
  2. 買い直せる物は迷わず手放す——ここで悩む時間が、片付けが進まない最大の原因になります
  3. 再入手が難しい物は保留箱に入れる——処分せず、日付を書いて箱にまとめます
  4. 保留期間を決めて置いておく——3か月から半年ほど置き、その間に一度も出番がなかった物だけを手放します
  5. 廃棄より譲渡・売却を選ぶ——同じ手放すなら、取り戻せる可能性が残る方法を選びます

3番目と4番目が要点です。保留は判断の先送りに見えますが、実際には「本当に使わないか」を実地で検証する期間になります。保有効果は時間とともに弱まるため、期間を置くこと自体にも効果があります。

まとめ

断捨離の後悔には型があります。使っていない物のうち、再び手に入れるのが難しい物を手放したときに起こります。

対策は、判断の軸を「使うかどうか」から「再入手できるかどうか」に変えることです。買い直せる物は迷わず手放し、そうでない物は保留箱に入れて数か月置く。この2段階にするだけで、片付けは進み、後悔は減ります。捨てられない自分を責める必要はありません。それは誰にでも働く認知の傾向です。

参考文献・出典

※1 : 「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和6年度)について」 |環境省
https://www.env.go.jp/press/press_03502.html

※2 : 「保有効果を測るアンケート実験について」 |大橋賢裕・日本大学経済学部
https://www.eco.nihon-u.ac.jp/wp-content/uploads/2023/05/90_01_16.pdf

※3 : 「一般廃棄物処理実態調査結果:統計表一覧」 |環境省廃棄物処理技術情報
https://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/ippan/stats.html

よくある質問

断捨離で後悔しやすいのはどんな物ですか?

再入手にコストがかかる物と、代替がきかない物です。具体的には、絶版になった書籍や資料、書類、思い出の品、特定の場面でしか使わないが必要になると困る道具などが該当します。逆に、いつでも同じものを買い直せる日用品は後悔につながりにくくなります。

物を捨てられないのは意志が弱いからですか?

意志の問題というより、行動経済学で保有効果と呼ばれる認知の傾向によるものです。人は自分が所有している物に、他人が同じ物を持っている場合より高い価値を感じます。同じ物でも、手放すときに求める金額のほうが、買うときに払ってもよい金額より高くなることが実験で確認されています。

後悔しない手放し方はありますか?

捨てる前に保留期間を設ける方法が有効です。すぐ処分せず箱にまとめて数か月置き、その間に使わなかった物だけを手放します。判断を先送りするのではなく、必要かどうかの検証期間として使うのがポイントです。再入手が難しい物だけは、この期間を長めに取ります。